コラム

ご紹介物件の活用事例 #003 橘珈琲店さま

開業した経緯(きっかけ)は?

実家が愛知県で料理屋をやってましてね。副業で喫茶店もやってたんですよ。ホーローのでかいポットにネルを被せて、勝手に淹れて飲んでたんです(笑)それが6歳くらいの頃です。その後もコーヒーはずっと飲んでたんだけど、美味しいと思える豆がなくて。結局、30歳の時に自分で焙煎を始めたんです。市内の卸業者を調べて「生の豆、譲ってください」って片っ端から電話して。豆をわけてくれた業者のなかに同い年の焙煎マンがいるところがあって。休みごとに押しかけては仕事の様子を夕方まで見せてもらって。自分で焙煎したのを飲んでもらったり、自分で淹れたのをまわりの人に飲んでもらってたら、売ってほしいって人がクチコミで増えていってね。この時期は毎日、家にかえったら納戸に入り浸ってました。自作の網で手焙煎を死ぬほどやりました。そのおかげで豆と対話ができるようになって、業務用の焙煎機でも難なく使えるようになりました。でも毎年すごい赤字でね(笑)金のかかる趣味って感じでしたよ。

物件探しはどんな風に進めたのですか?

50歳の頃から金沢市内の別の場所で珈琲屋を10年ほどやってたんですが、大家さんの都合でそこを急遽出ることになりまして。経営も順調だったし、なかなか場所が良くて気に入ってたんですけどね、しょうがないです。2ヶ月ちかく物件を探した末に、のうか不動産のホームページでこの物件に出会ったんです。ビビッときましたよ。家賃と広さと立地条件、全部が許容内だったんです。すぐに電話して中を見せてもらって契約しました。以前の店舗には物置がなかったんで、物置スペースを別に借りてたんです。この物件は以前のところの2倍の広さがあって必要十分なのに、ちょっとだけ家賃が安いんですよ。まあ駐車場とか光熱費は高くなりましたけどね。本当は郊外に移ろうと思っていたんですけど、常連さんたちがアクセスしやすいところにしてくれっていうんで、立地もちょうど良かったんですよ。移転したあとも、みなさん足繁く通ってくださってありがたいですね。

オープンまでの流れは?

ここはもともと事務所仕様だったんですよ。流し台すらなかったんです。だから、バックヤード以外は、排水設備も含めて、床、天井、壁、柱と、全部つくり直してもらいました。内装工事は前の店舗もお願いした会社に依頼しました。前の店舗の撤去工事とか復旧工事も依頼しなくちゃいけなかったんで、流れでこっちの店舗もお願いした感じです。デザイナーと何回も打ち合わせして出てきた見積もり額がびっくりする金額で(笑)「ここの材質はこうして、こういうふうに施工して」って感じで調整しながらコストダウンしていって。前の店舗で使ってた什器とか厨房器具なんかは全部持ってきましたよ。もったいないんで、ほぼ何も捨ててないです。ただ、大きいものから小さいものまで買い足しも必要で。おかげで家が一軒立つくらいお金がかかりました…。予定の3倍くらいかかったかも。でも、仕上がりにはじゅうぶん満足してますよ。

商材選びや焙煎方法のこだわりは?

うちの珈琲豆の多くは「ナチュラル」っていう生産処理方式のものです。皮をつけたまま乾燥させて、中の実の種を取り出すんですよ。腐っちゃうリスクも大きいんですけど、果肉が発酵するので発酵由来の風味があるんですよね。あと、焙煎には超低温で長い時間をかけてます。そのおかげで飲んだあとの酸味の余韻が凄く長いんです。あと雑味がなくて滑らかですね。すごく飲みやすいのに、スペシャルティコーヒーの個性がはっきり出てくるようにしています。淹れ方とかお湯の温度まで指示する店が多いんですけどね、正しい焙煎さえすれば、どんな淹れ方をしてもそれなりの味になるんです。こちらからは、濃さだけは自分の好みにしてくださいね、ってお伝えするくらい。このわたし独自の方法で焙煎したコーヒーは、「生」って意味のローコーヒー(Raw coffee)って独自に呼んでいます。淹れたコーヒーは夕方になっても酸化しないし、豆の状態でも1ヶ月くらい経っても酸化しないんですよ。

どんな珈琲豆店を目指すのですか?

少しずつでもファンというか常連さんがたくさん増えればいいなあと思いますね。うちはあえて外に看板を出してないんですよ。みなさん何屋さんかわからないでしょうね(笑)あえて目立たないように、看板は店内に置いてます。ここに移ってきた当初は通行人にジロジロ見られましたけどね。最近だんだんコーヒー屋ってことがわかってきたらしくて。「豆ほしいんですけど」って入ってきてくださる方が最近増えてきました。人から聞いてきたってお客さまも圧倒的に多くてですね。そういう方は常連さんになってくださりやすいですね。コーヒー飲めない人でうちの常連さんになった人も何人かいますよ。そういう方々って最初「コーヒー飲めないんです」って言う訳です。でもその方と会話していくをなかで、こういうのならいけるんじゃないかって飲んでいただいて。食わず嫌いじゃないですけど、飲まず嫌いの人が好きになってくれるっていうのは嬉しいものです。

馬のスペシャリストでもあるとか?

実は大学で馬術部に入ったのがきっかけで25歳の頃から、ずっと馬の仕事をしてました。コーヒーはずっと趣味というか副業だったんです。乗馬のインストラクター兼選手をしてた頃もあるし、競走馬のトレーニングセンターで競走馬のトレーニングをしていたこともあります。中央競馬会で厩務員とか助手の成り手に、馬のお世話とか調教に関することも教えてました。お客さんに調教を頼まれてた馬を金沢大学馬術部に預かってもらって乗っていた縁があって、いまではそこでコーチとして学生に教えています。被ってるこの帽子はね、調教師からもらったやつ。もう引退した人ですけど現役の時にもらったんです。デアリングタクトって三冠取ったのいたでしょ。あの調教師は教え子なんですよ。色々かなりためになったらしくて、そうやって律儀に送ってきてくれるんですよ。嬉しいですね。25歳から始めたこの馬の仕事は、いまも二足のわらじで。収入にはなってないけどやってるんですよ。

 

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