開設手続き
事業計画、屋号/法人名、資本金、開業資金が準備できたら、いよいよ手続きに入ります。個人事業主の場合と、法人設立の場合とで、必要な書類や手続きが全く異なりますので、注意しましょう。
会社設立(法人の場合)
1.商号が決まり次第ハンコの準備をする
会社概要の決定会社の商号(名前)、目的(仕事の内容)、会社の本店(住所)といった、会社を設立する手続きをする上で、必ず最初に決めなければならない概要を決めます。商号が決まったら、会社設立に必ず必要となる「ハンコ」を急いで準備しましょう。ハンコの角印、代表取締役印、銀行印がセットになっているもので、あなた自身にこだわりがなければ安いもので構いません。商号については、すでに登記されている会社と同名、同業の会社でも設立ができるようになりました。しかし、同一商圏で類似サービスをやっている同名の会社はないに越したことはありません。法務局で類似商号の調査ができますので、念のため確認しておきましょう。また、最低限、Yahoo!やGoogleで検索して、近くに同名の会社がないかチェックしておきましょう。設立する株式会社の概要が決まったら、最初に作る書類は、「発起人会議事録」(発起人が1名の場合には「発起人決定書」)です。発起人全員の意思で設立に関する重要なことを決めたということを書面化し、発起人全員で捺印しておきましょう。
2.定款の作成と公証人による認証定款
定款の作成と公証人による認証定款とは、会社の憲法のようなものです。会社を運営していくにあたっては基本的なルールを定めます。株式会社の定款のひな型は、日本公証人連合会のホームページにありますので、参考にしてください。
定款は、3部作成します(会社保管用原本、公証役場提出分、法務局提出分)。定款を作成したら、公証役場に出向いて、公証人に定款認証をしてもらいます。定款の認証を受けることで、初めて法的な効力を持つことになります。発起人全員の実印と印鑑証明書を持参します。発起人のうち誰か1人が代表として行く場合は、他の人たちの委任状を持って行く必要がありますので、注意してください。認証作業が終わったら、定款の謄本を2通受け取ります。1通が会社保存用で、もう1通は法務局の申請用です。
公証役場に持って行くものと、かかるお金
会社定款 |
3通(会社保管用原本、公証役場提出分、法務局提出分) |
委任状 |
公証役場に行かない発起人の人数分 |
個人の実印の印鑑証明書 |
発起人全員分 |
収入印紙 |
4万円分 ※電子定款の場合は不要 |
認証手数料 |
5万円 |
謄本交付手数料 |
2千円程度 |
個人の実印 |
公証役場に行く発起人は全員持参 |
3.出資の履行
出資金を、株式会社を設立する人(代表者)の個人口座に振り込みます。出資者全員から出資金を振り込んでもらったら、預金通帳を印字して出資金振込の記載があるページと通帳の表紙の裏のページ(銀行名、支店名、口座番号、口座名が記載されているページ)のコピーを取り、法務局へ提出します。
なお、振込の際には預金通帳に振込人名が印字されるようにします。なお、法務局の手続きが終わるまではこの「出資金」は引き出さない方が良いでしょう。
4.登記申請書を作成し、法務局へ登記の申請をする
法務局での登記手続きのための書類を準備します。登記の申請書のほか、取締役及び監査役選任決定書、就任承諾書、取締役会議事録、調査報告書を作成します。
法務局は全国にありますが、本店所在地を管轄していて商業・法人登記を取り扱っているところへ提出します。ちなみに、法務局への提出日が会社の設立日となります。法務局に申請してから約2日~1週間程度で登記が完了します。手続きの完了日は、書類提出時に教えてもらえます。
登記では、登録免許税として約15万円が必要となります。
5.法務局で「履歴事項全部証明書」などを入手
登記完了日に法務局に出向き、「履歴事項全部証明書」を必要部数発行してもらいます。ちなみに、「履歴事項全部証明書」とは登記簿謄本のことです。
登記簿謄本は、税務署や都道府県税事務所、社会保険事務所、法人口座を開設する銀行などに提出しますので、5通ぐらいとっておけば安心でしょう。また、会社の印鑑証明も2、3通とっておきましょう。
これらの諸費用として1万円位を見積もっておきましょう。
6.税務署や社会保険事務所に届け出る
登記簿謄本や印鑑証明を受け取ったら、税務署などで、会社設立の手続きを行います。税務署には、「法人設立届出書」や「給与支払い事務所等の解説届出書」、「青色申告の承認申請書」などを提出します。なかでも小規模事業者向けに、源泉所得税の納期をまとめられる特例措置を依頼できる申請書があります。通常は毎月支払わなければならない源泉所得税を年2回にまとめて支払いができるようになりますので、忘れずに申請しておきましょう。
これらの手続きの多くは、届け出の期限が設けられています。税務署関係は設立後1カ月以内に手続きを終えるようにしましょう。都道府県税事務所への届け出は、例えば東京都の場合、事業開始日から15日以内に届け出が必要です。
会社設立(個人事業の場合)
1.事業開始の手続き
事業を開始する際には、自宅兼事務所の場合は現住所の所轄の税務署に出向きます。自宅とは別の場所に事務所を構える場合は、その事務所を所在地を納税地にすることもできますが、「所得税の納税地の変更届」を、自宅住所側と新住所側のそれぞれの税務署に提出する必要があります。
また、所得(売上から経費を引いたもの)が290万円以上になる場合、事業税が発生する場合は、地方税を管轄する都道府県税事務所へも「個人事業開始申告書」を提出します。ただ、事業初年度で所得が見込めない人は、届け出の必要はありません。初年度の所得を確定申告すると、自動的に通知が届くようになります。
2.所得税の減価償却資産の償却方法はどう選ぶ?
事業のために活用する機械や車など、何年にもわたって使っていくモノは、固定資産となります。それらのものを経理処理する際は、買ったその時に全額を経費にすることはできません。耐用年数に応じて何年かにわたって償却する形を取ります。
事業開始時に届け出をすることによって、所得税の減価償却資産の償却方法として、「定率法」を選ぶことができます。償却方法は「定率法」と「定額法」があります。定額法は、毎年の減価償却費が定額となることで、「定率法」は資産を購入した初めの年の方が減価償却費は多く、年とともに減少していく方法です。事業開始時は、いろいろなものを購入することになるでしょう。定率法の方が減価償却率を大きく計上でき、節税効果が大きくなりますので、定率法を選択することをおすすめします。
届け出を出さないと、自動的に「定額法」が適用されますのでご注意ください。
3.「青色申告」の手続きをしよう!
個人事業主になったら、所得税を自分で計算し、年に1度、税務署に申告(確定申告)します。青色申告を希望する人全員が提出しなければならないのが「所得税の青色申告承認申請書」です。所定のフォーマットで納税先の所轄税務署に提出します。提出期限がありますので、開業届と同時に手続きをしてしまうことをお勧めします。
提出期限は、新規開業の場合、1月1日~15日までに開業届を出した場合は、その年の3月15日まで。1月16日以降に開業する場合、開業日から2カ月以内となります。
4.家族を従業員にする場合の手続き
「青色専従者給与に関する届出書」を提出すると、奥様など、家族と一緒に事業を行う場合、家族に対して支払った給与を全額経費にすることができます。もちろん、その場合、その家族の方がほかの仕事を持っていないこと、事業主と同居しており生計が同一であること、その事業に年間半年以上従事していること、確定申告の際の配偶者控除、扶養控除の対象になっていないこと、といった条件があります。
5.従業員を雇う場合の手続き
「個人事業主」であっても、届出をしておけば、スタッフを雇い入れ、その給与を経費にすることができます。「給与支払事務所等の開設の届出書」を事務所の所在地の所轄税務署に提出します。提出期限は、事務所開設後1か月以内となります。なお、同時に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」も提出しておきましょう。これは、スタッフの給与から天引きした源泉所得税の納付を年2回にまとめられる特例措置です。通常、源泉税は徴収した翌月10日までに納付しなければならないのですが、この届け出を出しておくことによって、手間がグッと減ります。